平成28年度 広島大学公開講座
「数学の基礎と展望」-広がり続ける数学の視点-
 平成28年8月7日 (日)
 広島大学理学部E棟1階 E102 講義室

「現代の確率論」 井上昭彦 氏
「自発的な規則パターンの生成と数理モデル」 上田肇一 氏
「写像類群 - トポロジストが考える図形の対称性の話」 古宇田悠哉 氏

1. 趣旨

現在、私たちが学校で学んでいる算数・数学は4,000年以上の歳月を超えて受け継がれてきました。
最近の約400年間における数学の進展は、特にめざましいものがあります。
私たちの興味に応じて、その深い内容について学ぶことができる環境も整っています。
世界中の多くの大学では今、この流れの中で数学に魅せられた人々が日々数学を学び、研究しています。
なぜ、数学を面白いと感じるのでしょうか。この素朴な疑問に自らの答えを見出すためにも,
今回の講座を担当される三名の講師のお話を通じて、数学に触れ、全身で数学を感じて下さい。
そして、一緒に数学の面白さを改めて発見しましょう。「数学の視点」が広がり続けていることを,
受講者の皆様に実感して頂く機会になればとの思いで本公開講座を企画致しました。


2. 受講対象者

高校生 (学年不問) 及び数学に関心のある方

3. 受講料

無料

4. 実施場所

広島大学理学部E棟1階 E102講義室 (東広島市鏡山1-3-1) (交通案内と宿泊の案内)



5. スケジュール

8月7日(日)
9:15 ― 受付
10:00 ― 10:10  開講式
10:10 ― 11:40  「現代の確率論」井上 昭彦 氏
昼休み, 特別懇談昼食会
13:00 ― 14:30 「自発的な規則パターン生成と数理モデル」上田 肇一 氏 
15:00 ― 16:30 「写像類群 -トポロジストが考える図形の対称性の話 -」古宇田 悠哉 氏
16:30 ― 16:40 修了式

6. 講師・講義内容の紹介

 現代の確率論

 井上 昭彦 氏
 私は高校生の頃、確率の問題が苦手でした。答えが出ても、どうも最後のところで、本当に正しいのか確信が持てない感じが残って嫌でした。
実は、私の当時のそういう感覚は、ある意味、正当なものであったといえます。数千年の歴史を持つ数学の中で、確率論が本当に厳密な数学の分野になったのは1930年代の始めころです。
それ以前の確率論は、ちょうど今の高校数学の確率と同じく、(例えばそもそも確率変数等の定義がはっきりしないなど) 最後は直感に訴える方式で、基礎があいまいだったのです。
「不確実性を厳密に解析する現代の確率論」について、紹介したいと思います。

 ◆講師自己紹介
井上 昭彦(いのうえ あきひこ)
広島大学大学院 理学研究科 教授
専門は確率論です。確率論では、マルコフ性という概念が基本的な重要性を持ちます。これは「記憶を持たない」というような感じの性質です。これに関して は、種々の強力な理論が存在すると共に、日本や世界の優れた数多くの研究者が研究を続けています。私自身は、それとは違う方向の、非マルコフあるいは記憶 を持つ確率過程を主な研究対象としています。この研究で目指しているのは、時間的な確率従属性を有効に記述する新しい数学理論の開発と、そのファイナンス への応用です。


 自発的な規則パターンの生成と数理モデル

 上田 肇一 氏
 砂紋や雪の結晶のような規則的な模様は砂や分子など、(模様の空間スケールに比べると)小さな要素同士が局所的に相互作用することによって自発的に発生 する。このような現象は自己組織化現象と呼ばれており、近年、理論的・実験的研究が盛んに行われている。自己組織化現象が発生する数理的仕組みを理解する 上で鍵となるのは、模様のない一様な状態に小さなゆらぎが与えられた際に、そのゆらぎが増幅する条件や増幅する様子を数学的に理解することである。そのた め、その仕組みを理解するためには現象の方程式による記述(数理モデルの作成)とその方程式に対する数学解析が重要になる。本講演では、化学反応や生命現 象において観察される自己組織化現象を例に、数理モデルの作成方法とその数学解析について説明する。また、最近注目されている生命現象への応用など、自己 組織化現象に関する未解決問題、及び今後求められる数学解析手法についても解説する。

◆講師自己紹介
上田 肇一(うえだ けいいち)
富山大学 大学院理工学研究部 准教授
自然現象にみられる様々な自己組織化現象の数理機構に興味を持っています。
一見異なる自己組織化現象から共通する数理機構を発見し、深いところで
つながっていることを理解できたときに研究の面白さを実感します。


 写像類群 --トポロジストが考える図形の対称性のはなし --
 古宇田 悠哉 氏
花や雪の結晶などの形が持つ美しさを、「対称性」という言葉をキーワードに観察し、前半では対称性を記述する数学概念である「群」について説明します。
私の研究分野はトポロジーです。トポロジーとは、曲げたり伸ばしたりひねったりして重ねられる図形は同じ図形だとみなす新しい数学の分野です。後半ではト ポロジーの視点で図形の対称性を記述する「写像類群」を紹介します。形が変わればその対称性も一般には変わりますが、同じ図形に対してでも、それを眺める 数学的視点が変われば「対称性」という言葉の持つ意味も変わってくることをお伝えしたいと思います。

◆講師自己紹介
古宇田 悠哉(こうだ ゆうや)
広島大学 大学院理学研究科 准教授
数学の業界ではトポロジー(位相幾何学)の専門家のことをトポロジストとよびます。トポロジストの端くれとして、全体像を把握するのが難しいような図形 (あるいは空間)を、数学という「目」を通して「見る」べく日々研究しています。趣味は旅行と読書、それから細々と続けている語学の勉強です。自分の「も のの見方」が根底から覆されるようなものに出会うことに喜びを感じます。この講座を通して、皆さんをそのような出会いへいざなうことが出来ればと思ってい ます。


7. 企画

お昼休みに、教員の方を対象として、 高校教育と大学教育の情報交換のための
 特別懇談昼食会「高校教育と大学教育の接点」
を開催いたします(1,000円程度の昼食代は自己負担になります)。
参加ご希望の方は 広島大学公開講座特別懇談昼食会参加申込書 にてお申し込みください。

8. 募集人員 

200名
(一般の方と高等学校からの一括でのお申し込みとの合計です) 

9. 申込方法

この公開講座の受講申し込みは、 広島大学エクステンションセンターで受け付けています。詳しくは下記の募集要項をご確認ください。お申し込みいただいた方には、受講票と本講座のテキストを送付いたします。テキストの発送は7 月中旬の予定です。平成 28 年 7 月 6 日(水)(当日消印有効)までにお申し込みください。締め切り以降でも可能な限り受け付け致しますが、テキストの発送が遅れることがあります。また、募集人員を超えた場合にはご希望に添えないことがございます。ご理解のほどよろしくお願いいたします。

LinkIcon募集要項(一般の方向けご案内) LinkIcon募集要項(高等学校からの一括申し込みのご案内) LinkIcon高等学校からの一括申込書
LinkIcon広島大学公開講座特別懇談昼食会参加申込書(参加を希望される教員の方用)

10. 問い合わせ先

〒739-8526 東広島市鏡山 1-3-1
広島大学理学部 数学教室 公開講座係
電話: 082-424-7350 (数学教室事務室)
FAX: 082-424-0710 (数学教室事務室)

11. リンク

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