広島大学理学部数学科 代数数理講座

トップページ > セミナー > 2010年度代数学セミナー

お知らせ

2010年度代数学セミナー

(第9回)
日 時 : 平成 23 年 2 月 21 日 (月) 15:00 -- 16:30 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B702 号室
講演者 : 原瀬 晋 氏(東京大学大学院数理科学研究科)
演 題 : F2-線形擬似乱数発生法の最適化のための高速格子簡約アルゴリズム
アブストラクト:(部分的に松本眞氏、斎藤睦夫氏との共同研究)
擬似乱数を評価する規準の一つとして、高次元均等分布性が用いられる。
メルセンヌツイスター法を含む二元体上の線形擬似乱数発生法に対しては、
上位ビットの均等分布の次元を具体的に計算することが可能であり、
擬似乱数の出力列から構成したある格子の簡約基底を求める問題
(二元体係数冪級数体の数の幾何)に帰着される。本講演では、
新しいアルゴリズムを導入し、均等分布の次元計算の高速化について述べる。
この方法は、Couture-L'Ecuyerによる双対格子を用いた改良よりも
計算量が減少することを計算機実験と合わせて紹介する。

(第8回)
日 時 : 平成 23 年 2 月 4 日 (金) 15:00 -- 16:30 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B701 号室
講演者 : 阿部 健 氏(熊本大学)
演 題 : 一般テータ関数の空間のstrange duality現象について
アブストラクト:代数曲線上の代数的な直線束のモジュライ空間であるピカール群上
にはテータ因子があり、それに付随する直線束の大域切断はテータ関数で与えられる。
これの非可換類似として、代数曲線上のベクトル束のモジュライ空間上の
行列式直線束の大域切断を一般テータ関数と呼んだりする。
代数曲線上で、階数の異なるベクトル束のモジュライ空間を二つ考えるとき、
それらの上の一般テータ関数のなすベクトル空間が双対になることがあり、
この現象をstrange dualityと呼ぶ。もっとも代表的な例は、
代数曲線上のSL(r)束のモジュライ空間上のレベル n の一般テータ関数の空間と
GL(n)束のモジュライ空間上のレベル r の一般テータ関数の空間が双対
と言うものであり、これはBelkale, Marian-Opreaによって証明された。
この他にもSp束や例外型代数群束のモジュライ空間に対しても
stragne duality が観察されている。また次元を上げて、
代数曲面上のベクトル束のモジュライに対しても近年strange dualityが
見つかっている。講演の前半では、これらさまざまな場合のstrange dualityを
紹介する。講演の後半では、 射影平面上のstrange dualityに関係して、
射影平面上の$\chi=0$,$c_{1}=4$となる一次元層のモジュライ空間上の
直線束の大域切断の次元の計算について紹介する。

(第7回)
日 時 : 平成 23 年 1 月 7 日 (金) 15:00 -- 16:30 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B701 号室
講演者 : 中岡 宏行 氏(鹿児島大学)
演 題 : A generalization of the Dress construction for a Tambara functor,
and its application to the Witt-Burnside construction
アブストラクト: For a finite group $G$, Mackey functors and Tambara functors are regarded as
$G$-bivariant analogs of abelian groups and commutative rings.
As such, many naive algebraic properties concerning rings and groups have
been extended to these $G$-bivariant analogous notions.
In this talk, we introduce a $G$-bivariant analog of the group-ring construction.
It generalizes the Dress construction, and also has some relation to the
Witt-Burnside construction.
As a byproduct, we also obtain a $G$-bivariant analog of the polynomial ring.

(第6回)
日 時 : 平成 22 年 12 月 10 日 (金) 14:45 -- 16:15 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B701 号室
講演者 : 古川 勝久 氏(早稲田大学基幹理工学研究科)
演 題 : Projective varieties admitting an embedding with
Gauss map of rank zero
アブストラクト:本講演では, 楫 元・深澤 知両氏と共同でおこなった
タイトルに述べた研究とそれにつづく最近の研究について発表する.
研究の対象となるのは, 正標数においてあらわれる階数の退化するガウス写像であり、
特に、その極端な場合のものを (GMRZ) と名付け考察する. 正確には,
射影多様体 $X$ がつぎの性質をもつとき (GMRZ) を満たすと定義する:
「ある埋込み $\iota: X \hookrightarrow \mathbb{P}^M$ が存在し,
そのガウス写像 $\gamma = \gamma_{\iota}: X \rightarrow G(\dim(X), \mathbb{P}^M)$ の
一般点 $x \in X$ での階数 $\rk (d_x \gamma)$ が零となる.」
本研究のひとつの結果として, 三次元以上の三次超曲面 $X$ に対しては,
$X$ が (GMRZ) を満すことと, 標数が $2$ であり $X$ がフェルマー型超曲面に線型変換でうつることとが,
同値であるとわかった.

日 時 : 平成 22 年 12 月 10 日 (金) 16:30 -- 18:00 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B701 号室
講演者 : 澤田 宰一 氏(東北大学大学院理学研究科)
演 題 : Splitting of Frobenius sandwiches
X を正標数の体上定義された非特異な代数多様体とする。
X 上のフロベニウス射が正規な代数多様体 Y を経由するとき、Y のことを
X のフロベニウス・サンドウィッチという。ナイーブな問として、与えられた
代数多様体に対し、そのフロベニウス・サンドウィッチとしてどのような
特異点や多様体が現れるのかを考える。ただ、何の条件も課さないと、
正標数特有の病的な状況も起こりうるため、系統的な取扱いは困難が予想される。
そこで、今回はフロベニウス分裂の意味で振る舞いのよいものに対象を限り、
フロベニウス・サンドウィッチとしてどのような特異点や多様体が
現れるかについて考察を行う。

(第5回)
日 時 : 平成 22 年 11 月 26 日 (金) 14:30 -- 15:45 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B701 号室
講演者 : 鍬田 政人 氏(中央大学経済学部)
演 題 : 種数2の曲線のヤコビ多様体の3等分点とMordell-Weil格子
アブストラクト: 種数2の曲線 $C$ が方程式 $s=f(t)$ で定義されているとき、楕円曲面
$E_t : Y^2 = X^3 + f(t)$ を考えると、$C$ のヤコビ多様体 $J(C)$
の3等分点のなす群 $J(C)[3]$ と $E_t$ の Mordell-Weil 格子の間には
ある関係があることが知られている。この関係と、Kloosterman氏の楕 円3次元
多様体の Mordell-Weil格子に関する最近の結果を結びつけ、$J(C)[3]$ が
$\Q(\sert{-3})$ で定義されるような $C$ の3次元の族を構成する。

(第4回)
日 時 : 平成 22 年 11 月 15 日 (月) 15:00 -- 16:30 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B501 号室
講演者 : 高尾 尚武(京都大学数理解析研究所)
演 題 : 双曲的曲線の配置空間に付随する導分Lie環の塔の安定性と織田の問題につ いて
アブストラクト :本講演では、1990年代前半に提起された
双曲的代数曲線の数論的基本群に関する2つの重要な問題の最終的な解決について述べる。
どちらの問題も1980年代初頭のGrothendieckの``Esquisse d'un programme”
における主要な提案と密接に関係している。
以下$\ell$は素数とする。
第1の問題は、普遍モノドロミー表現(順序付けられたr個の点が与えられた種数gの
滑らかで固有な代数曲線のモデュライスタックの数論的基本群の
副$\ell$外モノドロミー表現)に関する問題である。
これは、「ガロア・タイヒミュラー塔の普遍定義体
(普遍モノドロミ―表現の核に対応する、モデュライスタックの被覆の「定義体」)は、
(r個の点を除いて得られる)曲線が双曲的(2-2g-r<0)な場合、
(g,r)に依らないであろう」という織田孝幸氏による予測であり、
曲線がアファイン(r>0)のときには松本眞氏や伊原康隆氏、中村博昭氏らの研究に
よって肯定的に解決されていたが、この講演ではこの最終的な一般的解決について述べる。
さらに、この問題の重みフィルトレーションによる精密化についても述べる。
第2の問題は、「双曲的代数曲線の配置空間の副$\ell$基本群への外ガロア作用の核 は、
配置空間の次元に依らないだろう」という予測で、
曲線がアファインの場合には、伊原康隆氏、金子昌信氏の研究によって
肯定的に解決されていたが、この講演では一般的解決について述べる。
さらに、この問題の重みフィルトレーションによる精密化の一般的解決についても述べる。
どちらの問題も、証明の鍵となるのは配置空間の間の自然な射影から生じる
副$\ell$写像類群の間の写像の単射性である。
この単射性の証明は、対応する次数付きリー環の間の写像の単射性の証明に帰着される。

(第3回)
日 時 : 平成 22 年 10 月 8 日 (金) 15:00 -- 16:30 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B701 号室
講演者 : Nathan Broomhead (Leibniz Universit\"at Hannover)
演 題 : Dimer models and noncommutative crepant resolutions

(第2回)
日 時 : 平成 22 年 6 月 25 日 (金) 15:00 -- 16:30 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B701 号室
講演者 : 関谷 雄飛 氏(名大多元)
演 題 : クライン特異点の極小特異点解消とpreprojective代数の傾加群について
アブストラクト :クライン特異点の極小特異点解消は,マッカイクイバーの表現
(もしくはpreprojective代数の加群)の精モジュライ空間として
構成できることが知られている.
これはGIT商によって構成されるが,商はパラメーターの選び方に依存する.
ところが,今の場合,一般的なパラメーターに対しては,
構成されるモジュライ空間は常に極小特異点解消と同型である.
しかし,普遍族は異なる.
今回の講演では,パラメーターを動かした時に,普遍族がどのように変化するかを,
preprojective代数上の傾理論とパラメーター空間上のワイル群の作用を
用いることで記述できることを解説する.
また,その応用として,伊藤-中村によるマッカイ対応が一般のパラメーターに
対してどのように拡張されるかについても述べる.

(第1回)
日 時 : 平成 22 年 4 月 23 日 (金) 15:00 -- 16:30 ごろ
場 所 : 広島大学理学部 B701 号室
講演者 : 久野 雄介 氏(広島大学)
演 題 : 射影多様体に対するMeyer函数とその応用
アブストラクト : Meyer函数は、曲面の写像類群のコホモロジーに関連する一種の二次不変量です。
その起源は1973年にW.Meyerにより発見され、後にAtiyahにより詳しく研究された、
SL(2,Z)(=種数1の写像類群)上のMeyer函数にあります。
この講演では、ある種の双対多様体の補空間の基本群、
として与えられる群の上にMeyer函数が一意的に存在することを紹介し、
その後に代数曲線上の代数曲線束の局所符号数への応用について述べます。