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パーコレーション・無限粒子系の相転移現象と共存−非共存



今野紀雄 (横浜国立大学 工学部)




本講演は3つのパートに分けられる.

最初のパートは,今回の談話会の導入として,ビデオ1)を用い, 2次元ボンドパーコレーションと侵入型(インヴェージョン)パーコレーション について簡単に紹介する.

次のパートが本講演のメインパートであるが, ここで紹介する確率モデルは「Domany-Kinzelモデル」2)と呼ばれるものである.このモデルは, 以下で記述される1次元離散時間マルコフ過程であり, $\xi^A_n$ $A \subset 2{\bf Z}$ から出発したときの時刻 nにおける粒子の集合とすると、時間発展は

(i) $P( x \in \xi^A _{n+1} \vert \xi^A _n )
= f ( \vert\xi^A _n \cap \{x-1,x+1\}\vert)$

(ii) $\xi^A_n$ が与えられたとき, $\{ x \in \xi^A _{n+1} \}$ は独立, 但し,

\begin{displaymath}f(0)=0, \qquad f(1)=p, \qquad f(2)=q \quad \quad (0 \le p,q \le 1).
\end{displaymath}

で定義される.従って,このモデルは $S= \{ s=(x,n)\in {\bf Z}\times {\bf Z}_+: x+n= \hbox{偶数} \}$ 上で考えることが出来る.ここで, ${\bf Z}_+= \{0,1,2, \ldots\}$.特に, q = 2p - p2のときは,方向性のあるボンド・パーコレーションに, q = pのときは,方向性のあるサイト・パーコレーションに一致する. このDomany-Kinzel モデルに関する参考文献として, 例えば Durrett3)の第5章を参照のこと. 原点から出発した $\xi_n ^o$ に対する粒子の生存確率を $\theta (p,q)$ とおく. 即ち,

\begin{displaymath}\theta (p,q) = \lim_{n \to \infty} P ( \xi^o _n \ne \phi \> )
\end{displaymath}

さらに, $q \in [0,1]$ を固定したときの臨界確率 pc (q) を以下で定義する:

\begin{displaymath}p_c (q) = \inf \{ p \in [0,1] : \theta (p,q) > 0 \}\end{displaymath}

現在この臨界線 $(p_c (q),q) (q \in [0,1])$ は厳密に求められていないが,様々な評価や部分的な結果は得られている. このパートでは,それらに関して, 我々の研究の結果や予想をまじえながら紹介したい.

時間があれば,最後のパートでは,植生遷移モデル4)の共存と非共存の関係を,シミュレーションを見て頂きながら, 幾つかの知られている結果と予想問題についてお話したい.




参考文献

1)
古賀祐次 (1999). パーコレーションモデルのCG表現.
2)
Domany, E. and Kinzel, W. (1984). Equivalence of cellular automata to Ising models and directed percolation. Phys. Rev. Lett.$\>$ 53, 311-314.
3)
Durrett, R. (1988). Lecture Notes on Particle Systems and Percolation Wadsworth, Inc., California.
4)
Sato, K. and Konno, N. (1995). Successional dynamical models on the 2-dimensional lattice space. J. Phys. Soc. Jpn.$\>$ 64, 1866-1869.



 

Tohru Okuzono 平成11年11月29日