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反応拡散方程式系の正値定常解の一意性と非一意性について

山田義雄 (早稲田大学 理工学部)


$\Omega \subset R^N$ を滑らかな境界 $\partial\Omega$ で囲まれた有界領域とする. Dirichlet 境界条件のもとで次の半線形楕円型方程式系

\begin{displaymath}\left\{
\begin{array}{ll}
\mu\Delta u + f(u,v) = 0\qquad&\mbo...
...ox{on}\quad\partial\Omega,
\end{array}\right.
\leqno\mbox{(E)}
\end{displaymath}

の正値定常解を考える.ここで、$\mu, \nu$ は正定数,f,g f(0,0) = g(0,0) = 0 をみたす C1 級関数 である.(E)に関する正値定常解の存在については,分岐理論や Dancer による 不動点指数の理論などを利用してかなり広いクラスの問題について 結果が得られている.しかし、 解集合全体の構造を知ることは非常に難しい問題であり,正値解の一意性が成り立つか 否かを判定することも容易ではない.このあたりの事情は、 (E) に対応する常微分方程式系

\begin{displaymath}u_t = f(u,v), \qquad v_t = g(u,v)
\end{displaymath}

の解のダイナミクスが単純で,解が $t\rightarrow\infty$ とともに 唯一の正値平衡点に収束するようなケースでも大きく変わりはしない.これは、 比較原理が有効に働くことの多い単独楕円型方程式の場合と大きく異なる点である.

本講演では
(a) Cooperative system

\begin{displaymath}f(u,v) = au+bv-\varphi(u),\qquad g(u,v) = cu+dv-\psi(v)
\end{displaymath}

b,c= 正定数, $\varphi(0)=\varphi^{\prime}(0)=\psi(0)=\psi^{\prime}(0)
= 0$.
(b) Nuclear reactor model

\begin{displaymath}f(u,v) = au(1-u-v),\qquad g(u,v) = bu-cv
\end{displaymath}

a,b,c = 正定数.
(c) Lotka-Volterra model (prey-predator, competition)

\begin{displaymath}f(u,v) = u(1-u-cv),\qquad g(u,v) = v(1\pm du-v)
\end{displaymath}

c, d = 正定数.
などのモデルについて、一意性や非一意性に関する問題の現状と到達点 について述べる.



 

Tohru Okuzono
1999-07-02