在学生・卒業生からのメッセージ

以下の方々からメッセージをいただきました。(敬称略)

平成28年度学部1年生 木原 志乃

   こんにちは。私が広島大学に入学して早くも二ヶ月が経ちました。最初は初めてのことばかりで戸惑うことも多かったのですが、今では毎日濃い充実した生活を送っています。そこで今回は、数学科とはどのようなところなのか、私の二ヶ月の経験をもとに皆さんにお伝えしたいと思います。はじめに、数学科とはその名の通り数学を学ぶ学科です。しかし、高校の頃とは違い、具体的な計算などではなく、「証明」を多くやります。高校時代に、これはこういうものなのだ!と覚えさせられるように習ったことを、本質から見直し、自分の手で証明していくのです。
 高校の数学とのギャップに最初は苦しむかもしれませんが、友達と協力して解いていくなどして存分に数学を楽しんでください。また、数学科に属する人は大抵ちょっと変わった人が多いです。とは言ってもとても優しく個性豊かな方々ばかりです。様々な場所から来ている人もたくさんいるので見聞も広がり非常に面白い学科です!このように、広島大学の理学部数学科はとても素敵で魅力に溢れているところです。さらに理学部内でも様々なイベントがあり、友達もたくさんできます。ぜひ色々なことにチャレンジして4年間の大学生活を有意義なものにしてください。応援しています!


平成27年度学部2年生 中嶋 康貴

 私が数学科に入って1 年が経ちました。1 年のときは大学数学の授業とサークル活動を両立しながら楽しく大学生活を過ごしています。私はこの数学科に入学することが決まってからずっと自分が大学でしたいことを考えていました。
 まず、大学の授業に積極的に取り組むことです。1年の授業から、大学数学の難しさに圧倒されながらも空いている時間を使って少しでも復習したり、演習問題を解いたりして、少しは知識がついてきているのではないかと思っています。
 次に、大学生の間に留学することです。私は高校生のときに、社会の先生から留学することの素晴らしさを教えていただいており、留学に興味を持っていました。そして、今年の春、広島大学の「STARTプログラム」という留学プログラムに参加し、ベトナムへ2 週間留学させていただくことが出来ました。このプログラムには数学に関する内容が全くありませんでしたが、私は日本とは異なった文化や仲間、そしてベトナムの現状を知ることができ、充実した2 週間だったと思います。
 特に印象に残ったのはベトナムの孤児院に見学に行ったときのことです。私の将来の夢は教師になることで、具体的には決まっていませんでした。しかし、見学させていただいてから私はこの子どもたちのために何が出来るのか、深く考えさせられましたし、私はただ数学を教えるだけではなく、将来子どもたちが明るい社会へと羽ばたいていけるように支えていける教師になろうと思うようになりました。
 このように広島大学には留学したいと思っている学生に対するサポートがとても充実しています。日本の中だけで井の中の蛙になるのではなく、海外から日本を見ることはとても大切なことだと私は考えます。大学生にしか出来ないことをやることを私はおすすめしたいです。
 また、私は留学やサークル、そして数学科に所属していることで多くの仲間に出会えました。特に数学科の同級生たちは数学の勉強やそれ以外の学生生活で頼りになります。私たちと一緒に広島大学理学部数学科で楽しい学生生活を過ごしましょう。


平成26年度学部2年生 豊澤 美沙

 皆さんこんにちは。私が数学科に入って早くも1年が経ちました。最初は高校数学とのギャップに戸惑い、人生初めての単位制や留年制度など大学生活は楽しさもある一方で自立や責任を求められる学生生活でもあります。こんな私でも、1年間数学を深く学んだお陰で入学した時と比べある程度数学の知識はついたのかなと思います。1年生では解析学や線形代数について学びます。最初は誰でも分からないものです。根気強く毎日少しずつ数学と向き合うことで演習問題も解けるようになります。また、大学では英語や第二外国語、平和など専門分野以外も学ぶことができます。数学だけについて学ぶのではなく幅広く学び、またそれらを結びつけながら学べることも大学での勉強の楽しいところです。私は理学部数学科所属ですけど将来の夢は高校教諭です。教育学部とは違って数学の奥深くまで学べることが一番の利点だと思います。数学を学べば学ぶほど分からないことも多くなり、1つ理解するとまた1つ分からないことが増えます。高校までは問題を機械的に解いていたのに対し、大学では本当に頭を使わなければ問題が解けません。数学をすればするほど、どんどん数学に興味をもっていきます。私はこの楽しさを将来子供たちに伝えたいと思っています。数学が好きな人、数学教諭を目指している人が数学科に入ってさらに数学を好きになってくれると私は嬉しいです。皆さんと一緒に広島大学理学部数学科での大学生活が送れることを祈っています。


平成26年度学部3年生 谷口 祐真

 こんにちは。私は広島大学理学部数学科の3年生です。この文章を読んでくれているということは、数学が好き、または少しは興味があるものと思って話をさせてもらいます。
 大学で学ぶ数学の中に「解析学」という授業があります。勉強を進めていけば微積分の題材へとつながるのですが、その内容の第1ステップとして“「1×0=0」は本当に0なのか”という、にわかには信じ難い講義内容から始まります。大学数学とはそういうものです。大前提となる明らかな事実(公理)だけを手元に武器として持ち、問題とぶつからなければならないのです。しかし逆を言えば、一見難しそうなダンジョンでも、この数少ない武器を組み合わせたり工夫して用いれば絶対にクリアできるということです。そう考えるとなかなかやりがいのある科目だと思いませんか?
 偉そうに言っていても私もまだ勇者見習い程度です。皆さんが広島大学の理学部数学科に入学され一緒に問題に立ち向かってくれることを心より楽しみにしています。


平成26年度学部4年生 渕上 美規

 私が数学科を選んだ理由は、数学が好きで興味があるからでした。数学の先生になりたいということもあり決心しました。
 大学に入学して、数学の教科書に「証明 明らか.」などと定理や命題の証明がたった一行で書かれているのを見てとても驚き、戸惑いました。初めのうちは何がどうして明らかになるのか!としばしば思ったものでした。しかし、よくよく考えてみると、大学で学ぶ数学の教科書では、そういった読者の力量は仮定されているのでした。高校まではゆったりとしたカリキュラムが組まれていて、既習の事柄をもとに新しいことを習うのでそういったつまづきもなくスムーズに学習できていましたが、大学生になるとそうとばかりはいきません。どこかでつまずいた時は基本的なところが欠けているのではないかと思って自分で勉強します。積み重ねていくことが大切です。何が知りたいのか、そのためにどんな知識・考え方が必要かを考えて自ら学びます。
 大学にはこのようにして本格的に勉強をするための環境が整っています。知りたいことがあればすぐに図書館に行って本を読んだり、コンピュータを使って調べたり、先生や先輩、同期に聞いたりできます。高校までとは違い数学科には数学が好きな人ばかりが揃ってます。日々互いに励まし合いながら学ぶことができます。自分だけでは思いつかないようなアイデアなど聞くこともしばしばです。
 数学には感動する夢のような話がたくさんあります。私も素数が無限に存在することの証明や、オイラー数の話などには感銘をうけたことを覚えています。証明された大定理も未解決問題もたくさんあります。純粋にただ知りたいと興味をもって何かを自由に学べることは、やはり素晴らしいことだと思います。私自身本当に数学科を選んで良かったと思っています。


平成28年度大学院博士課程前期1年  数学専攻 権藤 曉則

 この文章を読んでいる皆さんは、多かれ少なかれ数学に興味があるのではないでしょうか。そこで、理学部数学科がどのようなところかを私の実体験をもとに書こうと思います。
 数学科の授業では、直感的に明らかだと思えること(x・0 = 0、最大値が唯一つであること等)でも、いくつかの公理から論理を組み立てて厳密な証明を与えていきます。この積み重ねにより、他では当たり前のように使っている公式や定理を根本から理解することができるのです。時にはいろんな疑問が生じることもありますが、先生や先輩方に質問すれば必ず親身になって教えてくれます。
 また、数学科では教員免許を取得したり、プログラミングを用いて自然現象をシミュレーションしたりもできるようになります。教員志望の人も多数いますが、数学科で高度な専門性を身につけることにより、何が重要なのかが分かるようになり、教える立場に立った時に自信につながります。プログラミングは一見数学とは別のことのように思えますが、数少ない命令文を用いて論理を組み立てていく過程は数学の証明と似ており、数学で培った論理力が生かされます。
 最後に、広島大学の数学科では4年生になると自分の興味を持った分野の研究室に配属され、卒業論文を書くことになります。私の場合、なかなか論文のテーマが決まらずにいたのですが、ゼミで出てきたある定理の応用を指導教員の先生から教わり、それを卒業論文にしました。証明の方針が立たなかったり、期限の一週間前に証明の不備が見つかったりして、いろいろと大変でしたが、先生や先輩方の指導や助言を受けながら、何とか書き上げることができました。私は卒業論文を書く過程で数学の奥深さを知り、さらに深く学んでみたいと思うようになりました。そして何より、4年間の集大成が形として残るというのはとても達成感があります。この達成感を皆さんにも味わってほしいと思います。


福山暁の星女子中学・高等学校  猪口 真(平成27年3月数学専攻博士課程前期修了)

 皆さん、こんにちは。今この文章を読んでいるということは、数学が好きで興味がある方でしょう。そして、「理学部数学科とはどういった場所なのか」知りたいのではないかと思います。そこで、理学部数学科で学ぶことについて少しお話をさせて頂きます。
 大学で学ぶことは、数学の他に物理や化学、生物などのいわゆる理科や、英語や中国語などの第二外国語、法律に関すること、教育に関することなど多岐にわたります。しかし理学部‘数学科’ですから、数学を学ぶことが大学での学習のメインとなります。
 3 年次までは、数学の基礎的な知識や考え方、それを基とした数学諸分野(解析学、幾何学、統計学など)の専門的な講義が行われます。これらの講義は、先生が前に立って説明をされるので基本的には高校での数学の授業と形式は変わりません。しかし高校までは当たり前として使ってきたことを厳密に証明したり、∀や∃のような論理記号のみで話が進んでいったりするので、ときには先生が何を言っているのか分からくなることもあるでしょう。私もそのような経験が多分にありました。しかし、不安になる必要はありません。理学部数学科には数学が好きな学生が集まります。分からないことが出てきても数学が好きな仲間と一緒に議論や質問をしあうことで段々と分かるようになってきます。数学が好きな学生と共に勉強をするというのは、数学を学ぶ上で最高の環境だと私は思っています。
 さて、そのような講義を一通り受け、4 年次になると自分が興味のある分野の研究室に入ります。そして興味をもった内容について先生と数人の学生と一緒にセミナー形式で学習していきます。いわゆる卒業論文を作成するわけです。このセミナーは毎回、自分のテーマに関する数学書を読んできて、その内容についての説明をします。不足があれば先生から突っ込みがあったりといろいろと大変ですが、卒業論文が完成したときの達成感は格別です。
 このように理学部数学科での大学生活は数学漬けの毎日になります。大変なことも多々ありますが、興味のある数学について学ぶのに理学部数学科は最も適しているのではないかと思います。この文章が皆さんの参考になれば幸いです。


(株)日本総合研究所  庄司 江梨花(平成27年3月数理分子生命理学専攻博士課程前期修了)

 大学入学当初、高校生の頃は当たり前だと思っていたことを具体的に証明していくということに衝撃を受けました。最初はすごく戸惑いましたが、高校生のころイメージでしかとらえていなかった数学を実際に式で表すことで、しっかりした数学の意味をとらえることができるようになってきました。大学で学んでいくうちに自然現象のような世の中で当たり前に起きていることも数学によって表すことができることを学びました。そしてより数学的な考え方を楽しむことができるようになってきました。
 大学院では生物や物理等の融合分野の問題を数学的な視点から解釈する研究を行っていました。研究はまだ世の中で誰もやったことがないことを考えていくので、うまくいかないことも多いです。しかし、学会に積極的に参加したり、様々な分野の人と議論することで新しいアイディアが生まれ、試行錯誤することで新しい発見をすることができました。一見数学と関係ないようにも思えますが、問題の本質を見抜き要素を組み合わせていく必要があるので、数学的な思考力や判断力が必要になります。また、一人で研究を進めていくのは大変ですが、数学科には様々な分野の専門の先生がいたり、周りの仲間もいるので環境についての心配はいらないと思います。
 数学科にいくと先生になる以外は就職先はないと思われがちですが、数学科で培った論理的思考力や判断力はどの業種でも必要とされると思います。ビジネスパーソンとしてテクニカルスキルも重要ですが、状況分析能力や問題を整理、判断する力やヒューマンスキル(コミュニケーション力や交渉力)も同等に評価されるので、必ずしも学ぶ学問が就職に影響するわけではないと思います。私も経済を支える土台をつくりたいと思い、今の会社を第一志望として就職活動を行い、無事入社することができました。
 数学はとても奥が深いので理解しきれなかったことが多いですが、数学を学ぶことによって得られるものは非常に多いと思います。徹底的に何かに没頭することは何かに対する知識だけでなく自身の様々な広がりをもたらしてくれると思います。皆さんも数学に興味があるならぜひその一歩を踏み出してみてください。


広島県立大崎海星高等学校 教諭  中籔 圭(平成26年3月数学専攻博士課程前期修了)

 私は現在、全校生徒63 名(平成27 年度現在)のとても小規模な学校で教鞭を執っています。今年度からは1学年の担任を任され、慌ただしくも充実した毎日を過ごしています。
 おそらくこれを読んでいる方の多くは数学が得意教科であり、数学に興味をもち、大学に進学した後も数学を勉強したいと感じていることでしょう。一方で「大学の数学ではどんなことを学ぶのだろう?」という疑問を持っている人も多いと思います。ここでは私なりの考えを簡単に3つばかり述べます。
 1つ目は大学の数学では証明を扱うことが多く、すべて定義に基づき、厳密に証明できるという点です。「厳密に」というのは、図を用いて説明するのではなく、感覚的に明らかな場合でも定義に従って論理的に証明を組み立てられるということです。そのため定義は非常に重要であり、ときには定義した内容が「そもそも定義として成り立っているか」ということすら証明の対象となります。
 2つ目は学習方法の違いです。大学では高校の数学の授業のようにテキストの内容をすべて学習するということはしません。私は論文を読んでいてわからないことが出てきたら、図書館やインターネットで文献を漁り、自分の研究に必要なページだけをピックアップして学習するというスタイルになりました。論文の1行を解読するために必要な知識を集めていると1週間以上経過していたこともありました。
 3つ目は高校数学との関連性です。私は微分方程式を専門に研究を行ってきましたが、高校数学で学習した微分はもちろん、積分、数列、ベクトル、三角関数、指数・対数関数をはじめとして、おそらく高校数学で学んだ内容はほとんどすべて活用してきました。またその際に、高校で学んだ内容を一般化した概念や定理に多く触れることができました。生徒に教える立場になった今ではそこで得た知識が授業をする上での大きな自信に繋がっています。
 最後に、教師として高校生諸君にお願いです。学習した内容をそれだけで完結させるのではなく、他分野との繋がりを見出したり、新しい状況に応用を試みるよう習慣づけてください。広島大学ではそんな皆さんを全力で支援する最高の環境が整っています。


パナソニックアドバンストテクノロジー(株)  夏 文雄(平成18年3月数学専攻博士課程前期修了)

 「大学では学びたい学問に没頭するのが一番だ」これは、大学院を卒業し就職した今、私がとても実感していることです。
 数学科に進むかどうか悩んでいる人は、その原因の一つに、「卒業後の進路に対する不安」があるのではないでしょうか。「教員になりたい」などの明確な目標を持っている人は不安は少ないと思いますが、「特に目標はないがとにかくこれからも数学を学びたい」と思っている人は、卒業後の不安が大きいと思います。中には、卒業後のことを考えて「就職のしやすそうな他学部」に進もうかと迷っている人もいると思います。
 私自身も高校時代はこのようなことで迷いました。しかし、「興味のある数学をより深く学びたい」と思い、大学でその目標を達成させたいと考え、数学科に進むことを決心しました。今、この決断は間違いではなかったと確信しています。なぜなら、学部、大学院の6年間数学を思う存分学ぶことが出来たし、不安に思っていた就職も、第一志望の企業に決まったからです。
 企業はそれぞれに求めている人材像を持っています。就職においては、その人材像に合っていることが一番重要で、どの学科・専攻を卒業したかはそこまで重視されていない。また、同じ企業の同じ部門でも多彩な人材を必要としているので、物理・電子工学・営業力・数学的思考力など、バランスを考えて人材を集めている。就職活動を通して、そのような印象を持ちました。
 つまり、卒業後の進路ばかりに気を取られ、就職のしやすさ・しにくさを想像して学部や学科を選ぶのはあまり良くありません。大学では「学びたいと思う学問」に没頭するのが一番です。それがもし数学であれば、数学科に進むのが一番だと思います。
 現在最も深く学びたいものは何なのかをよく考えて下さい。そして、何か1つでも結果が残せるよう、充実した大学生活を送って下さい。


大阪府立成人病センター  福井 敬祐(平成27年3月数学専攻博士課程後期修了)

 進路として数学科を希望される際には、数学科では何を勉強しているのか、どんなところに就職しているのかということが気になることと思います。今回、少しでも皆様の進路決定のお役に立てればと、数学科を卒業生の進路の一例として簡単ではございますが、私の職業を紹介させていただきます。
 現在、私はがんを中心とした成人病の治療・研究を行う大阪府立成人病センターで生物統計研究員として勤務しています。生物統計研究員とは医師の方が考案する新治療法の効果を測定するため、統計解析法を提案することや解析事態を担当する臨床研究に携わる仕事です。さらに、がん登録と呼ばれるがん患者さんのデータを活用して、がんの要因を分析したり、がんの罹患の経過を調べたりする疫学研究にも関わっており、がんの予防対策に関する研究を行うことも私の仕事の一つです。
 ここまで書くと数学はあまり関係がないように感じられますが、広島大学在学中の私の専攻は数学の応用分野である数理統計学でした。数理統計学はデータから有益な情報を取り出して利用する統計学について、数学理論を応用して研究を行う学問分野です。私の仕事は医師の方の臨床データやがんに関する死亡者や罹患者のデータを扱う仕事です。データからよりよい情報を得るためにどのような統計手法を用いればよいかを理論的に考察することや統計手法自体の開発を行うこと、分析を行うためのプログラミングなど、専攻した数理統計学の知識や研究の成果が随時役立っています。
 数学は非常に奥深く、そして、様々な分野で応用されている学問です。一方で大学在学中に学べる数学は非常に限定的です。数学を学んで病院に勤務できるなんてことを知っている人など数学科の学生にもほとんどいないでしょう(私自身も知りませんでした)。少ない時間の中で有意義に数学を学ぶためにも数学科と数学に対する理解と目的意識を持つことが重要です。私の簡単な職業紹介を通じて数学科を卒業した学生がどんな所でどんな仕事をしているのかに興味を持っていただき、数学と数学科に対する理解を深めていただくきっかけとして、よりよい進路の選択に繋がれば幸いです。


津山工業高等専門学校 講師  宮崎 隼人(平成27年3月数学専攻博士課程後期修了)

 この文章を読んでいる皆さんは数学を大学で勉強したい、またはしようと思っている方々なのではないかと思います。では皆さんはなぜそう思っていますか。私は実に単純でした。数学の先生になろう。それも高校の担任の先生に勧められたから。
 こうして本当になんとなく数学科に入ると、すぐに感動する出来事がありました。私は高校2 年生のとき、なぜ負の数同士を掛け合わせると正の数になるのか、ふと疑問に思ったことがあります。塾の先生に聞いても、中学1 年生の教科書を開いても納得できず、ずっともやもやしたままでした。そのもやもやは大学の解析学(微分積分学)の授業を受けてすぐに晴れることになりました。実は実数の公理というものから負の数同士を掛ければ正の数になることが証明される。本当に目からうろこでした。それからは心から数学が好きになり、さらに友人たちとのここでは書けないようなことや教育実習などの経験を通して、数学の先生になりたいという気持ちも揺るぎないものになりました。
 こうして広大で学部4 年間、大学院2 年間と学び、私は数学の先生になるという目標を叶え、広島県内の中高一貫校の教員になりました。それから充実した日々を過ごしていたのですが、なぜか心にぽっかり穴が空いていました。もっと数学を研究したい。それに気づいた私は、職場の校長先生の後押しもあり、大学院の博士課程後期に進学しました。それからは仕事と研究の2 足のわらじです。正直かなりきつかったですが、私が大学に戻ってくる際に快く迎え入れてくださった先生をはじめ、多くの方々に助けられ、無事博士号を取得することができました。現在はこれまでの教員経験を活かすことができ、研究活動にも取り組める高専で働いています。大学入学時は自分が研究者になるとは夢にも思っていませんでした。もしかしたら高校時代の担任の先生に見抜かれていたのかもしれません。
 広大数学科は中四国地方屈指の数学図書館を擁し、先生方も非常に優秀で親切に指導してくださる方ばかりで、数学を学ぶには最高の環境が揃っています。皆さんもぜひ広大数学科で本当に自分がやりたいことを見つけ、それをとことん追い求めてください。


Date: 13 July, 2016
文責:ホームページ係