$X$をRiemann面, $K_X\rightarrow X$を標準束, $r$を2以上の自然数とします. このとき, 正則切断$q\in H^0(K_X^r)$と$K_X$の二乗根に対して巡回Higgs束という概念が定義され, さらに巡回Higgs束を用いて定まるある楕円型方程式の解として, 調和計量という概念が定まります. (特に, 開Riemann面上の) 巡回Higgs束の調和計量に対する漸近条件として完備性という概念が2020年にLi-Mochizukiにより導入され, また完備調和計量の存在と一意性が証明されました. Li-Mochizukiによりその概念が導入された際の背景や問題意識とは異なり, 私は完備調和計量には複素解析やポテンシャル論との関連や相互作用による発展性があるのではないかと考えています. 今回の発表では, 以下のプレプリントに基づき, その概要の説明をします. 特に, 様々な状況において平衡測度が何か別の測度の列で近似されるというプロセスを完備調和計量の観点から理解することを一つの究極の目標としており, まだ単に究極の目標でしかないのですが, そのことに関する説明をします.
- N. Miyatake, Shannon entropy for harmonic metrics on cyclic Higgs bundles, arXiv: 2410.08571 v2.
N. Miyatake, Shannon entropy for harmonic metrics on cyclic Higgs bundles II, arXiv: 2508.12844.
N. Miyatake, Complete harmonic metrics and subharmonic functions on the unit disc, arXiv: 2508.12848.