教員免許更新講習
『数学とその発展』
通信教育科目の解説と資料
(3) 関孝和の数学:消去法と行列式
これは雑誌記事を読んで、どの位理解できるかを試されていると思ってください。次の日本数学協会発行の雑誌『数学文化』に書いた記事
「関孝和の数学:消去法と行列式」(ここをクリック)
を一時間読んで(全体が読めなくても気にしないで)感想文(レポートを提出いただくか、筆記試験に含めるかはこの暫定版では未定ですが、「○○が難しかった」でもよいと思っています。)を書いていただければ幸いです。
和算が西洋数学に伍した点はいくつかありますが、行列式がその一つであることは有名です。実際には、ライプニッツと関孝和がほぼ同じ時期に考え出したようなのですが、はっきりしているのは『算法発揮』というそれに特化したような本が世界で一番早く日本で1690年に出版されていることです。
この記事で注目してほしいのは
A + Bx + Cy = 0 (1式)
D + Ex + Fy = 0 (2式)
G + Hx + Iy = 0 (3式)
が解を持つための必要十分条件、つまり3×3係数行列の行列式(=0)を『算法発揮』が明確に与えている点です。実際、(1式)と(2式)からyを消去して得られる(1’式)、(1式)と(3式)からyを消去して得られる(2’式)を作って、後はたすき掛けで答を得ており、さらに6×6行列の行列式まで一般化しています。関のやり方は必ずしもこうではなく5×5行列では間違いがあるのも、歴史の難しいところです。また、上ではxとyの一次式としましたが、和算ではこの形で行列式を論じることはなく、yがxの二乗のときしか扱っていません。勿論、3変数連立一次方程式も係数が具体的に与えられたときは、東洋では紀元1世紀頃から解法が知られていました。