広島大学大学院先進理工系科学研究科数学プログラム紹介

数学プログラムは、代数数理、多様幾何、数理解析、確率統計、総合数理の5グループで構成されています。本プログラムは、日本最大級の数学図書室と計算機室を持ち、事務組織の着実なサポートのもとで大学院生とともにスタッフ全員が精力的に教育・研究活動を行っています。本プログラムの特徴は、構成員の研究分野が広汎であり、個々の純粋な数学理論の研究を推進するとともに、必要に応じて他分野の研究者と研究グループを組織し学際的な共同研究を行う体制が整っていることです。課程を修了した人々は研究者や教育者として社会に貢献しており、企業の研究所や開発部門においても優れた成果をあげ高い評価を得ています。また、数学を必要とする人のために広く門戸を開き、生涯教育、国際化などの社会的要請に応える努力を不断に行っています。
数学プログラム紹介ポスター
大学院入学者の出身情報・大学院修了者の進路など

代数数理グループ

スタッフ

木村 俊一(教授) 代数多様体の Chow 群の研究、モチーフ理論
島田 伊知朗(教授) 代数多様体のトポロジー、K3曲面、格子理論
高橋 宣能(准教授) 開代数多様体、数え上げ幾何、モチビックゼータ
是枝 由統(特任助教) 代数多様体の特異点、ジェットスキーム
助永 真之(特任助教) トロピカル多様体、Berkovich空間

研究紹介

代数数理では、主に数論、代数幾何、表現論および応用代数の研究が行われている。数論は1,2,3と数えられる数の性質を研究するものであり、代数幾何は四則演算により定義された図形の性質を研究するものである。どちらもギリシャ時代にさかのぼる伝統を持つ分野で、角の三等分の作図不可能性や5次方程式の非可解性など数々の難問を解決してきた。20世紀に入って代数的トポロジーや群の表現論の手法の導入により飛躍的に発展し、フェルマー予想の解決など大きな成果を上げている。
本グループでは、モチーフ理論、特異点理論、類体論、モジュライ理論、数論的トポロジーなど、他分野と交流しつつ急成長を続ける純粋代数理論を研究するほか、乱数・符号・暗号など計算機への代数の応用も研究され、本グループメンバー開発のメルセンヌツイスタ擬似乱数は世界標準となっている。

多様幾何グループ

スタッフ

石原 海(教授) 低次元トポロジー、特に結び目理論
藤森 祥一(教授) 微分幾何学、特に曲面論
寺垣内 政一 (協力教員・人間社会科学研究科教授) 位相幾何学、3次元多様体と結び目、特にデーン手術の研究
奥田 隆幸 (准教授) 不連続群、冪零軌道、コンパクト対称空間上の代数的組合せ論
Luis Pedro Castellanos Moscoso(特任助教) 微分幾何学、特にリー群論、シンプレクティック幾何学

研究紹介

現代幾何学は、物理学からのインパクトを受けて新しい多様な数学として生まれ変わりつつある。トポロジーは従来の幾何学にとどまらず、新しい目的意識や思考法を重視する数学である。多様体は現象が一般性や有界性を持つ場合に最も基本的なモデルであって、物理学とも深く関連し、数学の新しい発展を導くものである。微分幾何学と表現論を中心とした研究グループでは、多様体・リー群上の微分幾何学を核として、極小曲面論、表現論、複素幾何を用いたさまざまな研究を行っている。トポロジーを中心とした研究グループでは多様体のトポロジー、特に曲面、結び目および3次元多様体、4次元多様体を、代数、位相、幾何、微分トポロジーというさまざまな視点から研究を行っている。

数理解析グループ

スタッフ

川下 美潮(教授) 偏微分方程式論、散乱理論
内藤 雄基(教授) 非線形解析、微分方程式
池畠 良(協力教員・人間社会科学研究科教授) 発展方程式、解の漸近挙動
下村 哲(協力教員・人間社会科学研究科教授) ポテンシャル論、ソボレフ関数の研究
滝本 和広(准教授) 非線型楕円型・放物型偏微分方程式論
平田 賢太郎(准教授) ポテンシャル論、半線形楕円型方程式
神本 晋吾(講師) 漸近解析、WKB解析、代数解析

研究紹介

自然科学に現れるさまざまな現象は、数理モデルを用いることにより数学的に表現される。そして、それらの現象の解明を通して、多くの新しい理論が構築されている。
数理解析グループでは、自然科学に現れる諸現象を、力学系や微分方程式等によって記述し、数学解析の基礎の上に打ち立てられた実解析、複素解析および関数解析等の最先端の手法を駆使して研究し、そのメカニズムを解明している。
微分方程式の分野では物理現象を記述する微分方程式の解の構造や挙動に関する研究、特に非線形現象の解明や弾性体に関する散乱理論などが研究されている。漸近解析の分野ではボレル総和法を用いたストークス現象の解析、WKB法を用いた特異摂動問題に関する研究が行われている。ポテンシャル論分野では領域の形状や空間構造に依存する調和関数・温度関数・ソボレフ関数の定性的性質、境界挙動、さまざまな関数空間におけるポテンシャル評価の研究を行いつつ非線形問題に取り組んでいる。関数不等式の分野ではソボレフ空間をはじめとする関数空間上で成り立つ不等式に焦点を当て、不等式の等号成立条件を変分問題の形に書き換え解析し、等号成立の成否や等号成立を満たす関数の定性的研究、関連する楕円型方程式の研究を行っている。

確率統計グループ

スタッフ

井上 昭彦(教授) 記憶を持つ確率過程、数理ファイナンス、時系列解析
ノ原 宏和(教授) 非正規性の下での標本分布に関する研究
若木 宏文(教授) 高次元データ解析、漸近展開、経時データ解析
伊森 晋平(准教授) モデル選択、補助情報を利用した統計解析
小田 凌也(助教) 多変量解析、モデル選択、漸近理論

研究紹介

この分野は、人間の営みに関わるものも含んだ意味で自然界におけるランダムな現象の数学的解明を目指しており、自然科学、工学、医学、人文社会科学などと深く関わった研究を行っている。確率論は、ランダムな現象の数学的構造や普遍的な法則を探求し、統計学は、現実のランダム現象の法則を決定し応用するという、異なったアプローチで研究している。
現在、確率論グループでは、確率過程論・確率解析・数理ファイナンス・保険数理・数理物理学への確率論の応用などの研究を行っている。数理統計グループでは、主として、多変量解析・推測理論・実験計画法・統計的漸近理論・ベイズ推測・ノンパラメトリック法・時系列解析・計算機統計理論等、データから情報を引き出すための方法と理論の研究を行っている。

総合数理グループ

スタッフ

水町 徹(教授) 非線形分散型偏微分方程式、非線形波動
小鳥居 祐香(准教授) 低次元トポロジー、結び目理論
澁谷 一博(准教授) 微分式系の幾何学、フィンスラー幾何学
橋本 真太郎(准教授) ベイズ推測、漸近理論、非正則推定論

研究紹介

総合数理では、幾何、解析、統計の各分野について総合的見地から研究、教育を行っている。
幾何の分野では、微分式系を土台にした幾何学の微分方程式への応用等の微分幾何的内容、およびトポロジーや結び目理論の諸科学への応用、それらを複合した広い意味での幾何学の研究・教育を行っている。解析の分野では、微分方程式系の幾何学的性質の解明、非線形波動にあらわれるソリトンの安定性解析、およびそれらの複合的な 応用に関する研究・教育を行っている。統計の分野では、確率論に基づく数理統計学や計算機統計学の理論の複合的な 応用を通じて、現代統計学の総合的な研究・教育を行っている。
また、総合科学部の数理情報科学授業科目群担当教員を中心に運営しているオムニバス形式の数理情報科学セミナーでは、 各分野の最新の話題について初学者にもある程度理解できるよう配慮した講演がなされている。