数学通論 I （2007年度前期）

• 概要
• 資料
• 進行状況
• 中間試験
• 期末試験
• 講義を終えて （という題名の冊子に書いた文章）

概要

• 実数の持つ「距離」という概念に着目してそれを抽出したものが「距離空間」である. この講義では距離空間を定義し, 実数に対して定義されていた概念 （数列の収束や関数の連続など） を, 距離空間に対しても定義してその性質を調べる.
• 図形から得られる幾何学的直感と論理的な考察が, 結びつくことを目指す.
• キーワード: ユークリッド空間, 距離空間, 開集合, コンパクト集合, 連続写像.

資料

• 配布したプリントはこちら: [ pdf (192KB) ].
• 中間試験問題（2007/05/31 実施）はこちら: [ pdf (45KB) ].
• 期末試験問題（2007/07/26 実施）はこちら: [ pdf (53KB) ].
• 演習問題のプリントは, 倉先生 のページの中の Exercises in Math. にあります.
• 集合・写像・論理記号に関する勉強したい方は, 教養ゼミのページ に演習問題のプリントがあります.

進行状況

1. (04/12) 概要説明.
2. (04/19) 実数の開集合.
3. (04/26) 実数の開集合（続き）, 実数の閉集合.
4. (05/10) 実数の閉集合（続き）, コンパクト集合.
5. (05/17) コンパクト集合（続き）, 連続写像.
6. (05/24) 連続写像（続き）.
7. (05/31) 中間試験.
8. (06/07) ユークリッド距離, ユークリッド空間の開集合.
9. (06/14) ユークリッド空間の開集合（続き）, 閉集合, コンパクト集合.
10. (06/21) ユークリッド空間のコンパクト（続き）, 連続写像.
11. (06/28) 連続写像（続き）, 集合の濃度.
12. (07/05) 距離空間, 距離空間の開集合.
13. (07/12) 距離空間の開集合（続き）, 閉集合, コンパクト集合.
14. (07/19) 距離空間のコンパクト集合（続き）, 連続写像, 同相写像.
15. (07/26) 期末試験.

中間試験

• 実施日時: 05/31（木）12:50-14:20.
• 試験問題はこちら: [ pdf (45KB) ].
• 受験者数：81名
• 平均点：47.88点（105点満点, 追加問題は除いた点数）
• 得点分布：

  100〜   :  3: ***
   90〜99 :  1: *
   80〜89 :  3: ***
   70〜79 :  5: *****
   60〜69 : 12: ************
   50〜59 : 17: *****************
   40〜49 : 15: ***************
   30〜39 :  9: *********
   20〜29 :  5: *****
   10〜19 :  6: ******
    0〜 9 :  5: *****
  

期末試験

• 実施日時: 07/26（木）12:50-14:20.
• 試験問題はこちら: [ pdf (53KB) ].
• 受験者数：75 名
• 平均点： 47.23 点（110点満点, 追加問題は除いた点数）
• 得点分布：

  100〜   :  7: *******
   90〜99 :  2: **
   80〜89 :  4: ****
   70〜79 :  6: ******
   60〜69 :  5: *****
   50〜59 :  6: ******
   40〜49 : 13: *************
   30〜39 :  9: *********
   20〜29 :  9: *********
   10〜19 :  5: *****
    0〜 9 :  9: *********
  

講義を終えて

• 数学通論 I では, 距離空間を扱った. 教科書として 「集合と位相」(鎌田 正良(著), 近代科学社, 1989) を用いて, 以下の内容について講義をした:
  • 実数 $\R$ の開集合・閉集合・連続写像・有界集合・コンパクト集合,
  • ユークリッド空間 $\R^n$ の開集合・閉集合・連続写像・有界集合・コンパクト集合,
  • 距離空間の開集合・閉集合・連続写像・有界集合・コンパクト集合.
  このように, まず実数 $\R$ の部分集合を扱い, 次にユークリッド空間 $\R^n$ の部分集合を紹介し, 最後にようやく一般の距離空間が登場する, という順序にした. いきなり距離空間をやると抽象的過ぎるだろう, と考えたからである. 学生の理解の為には, この方法は良かったと思われる. しかし一方で, 同じようなことを何度も繰り返すことになるので, 時間的には厳しくなる. 勿論, 例えば距離空間のε-近傍が開集合であることの証明は, 「$\R^n$ のε-近傍が開集合であることの証明と全く同様」 で済ませることになるのだが, そうしたらそうしたで 「証明を省略しないで欲しい」 とか言われたりする訳だ.
• 内容の補足. 学期中に, 集合の濃度について習ったことが無いと学生から聞いたので, 講義 1 回を集合の濃度の話に充て, 自然数と整数と有理数と実数の濃度, 対角線論法, などを紹介した. あ, あと, 他学部からの受講生も居て, 彼らは「写像を習ったことが無い」ということを言っていた (線型写像は習っているようだ). そちらまで講義で解説する余裕は無いので, 自習用のプリントを配布した (教養ゼミで配布したプリントをコピーして渡しただけだが).
• 成績は, 中間試験と期末試験の点数によって付けた. 諸事情あって中間試験が抜き打ち (正確には前日にメールで予告) になってしまったことを, お詫びしたい. が, 結果から見ると, 特に中間試験の出来が悪いということも無かった. 単位取得の基準は, 大雑把に言うと, 「$\R^2$ の具体的な部分集合に対して, 内部と閉包を書け (証明不要)」 「距離空間のε-近傍が開集合であることを証明せよ」 「距離空間から距離空間への連続写像に対して, 開集合の逆像が開集合であることを証明せよ」 あたりの問題がまぁ 6 割くらい出来ていること, という感じに (結果的に) なった. 成績の分布は以下の通り: S: 6名, A: 10名, B: 13名, C: 22名, D: 24名. ちなみに, 成績が S である為の条件は, 試験の点数が 9 割を超えていること. この成績を取った学生は, 自信を持って良いと思う (そして, こんな講義に満足しないで, より進んだ内容の本などを読むことを推奨する).
• 雑感. 期末試験で 「距離空間のε-近傍が開集合であることを示せ」 という問題を出題した. この問題で不正解だった学生の多くは, 「示すことが何であるか」を間違えていた. つまり, 問題文から, 「(X,d) を距離空間とする. ∀a∈X, ∀ε>0 に対して, U(a;ε) が開集合であることを示せば良い」 という翻訳 (?) が出来ない. 勿論, わざと問題文を曖昧に書いたのは, そういう翻訳を出来るかどうかを問うているからだが. しかし, これは, 数学の能力なのだろうか (寧ろ, 日本語の能力 ?).